これは。

ベートーヴェン生誕250周年の変化球かな、と思ったけど、それだけにとどまらず面白かった。

ベートーヴェンの愛弟子: フェルディナント・リースの数奇なる運命 - かげはら 史帆
ベートーヴェンの愛弟子: フェルディナント・リースの数奇なる運命 - かげはら 史帆

というこちらの本。
『ベートーヴェン捏造』(ちなみにこちら→https://niyari-orbit-catseye.at.webry.info/201811/article_1.html )の作者が、ベートーヴェンの愛弟子の一人で『ベートーヴェン捏造』でも触れられていたがベートーヴェンの伝記を記したフェルディナンド・リースについて書いた本

しかしフェルディナンド・リースというと一般にはこの「ベートーヴェンの愛弟子の一人」で「伝記を書いた」に尽きるというか、リース本人についてははっきり言ってあまり知られていないし、もしかしてこれが日本語では初めての包括的な伝記になるのかな
というのも、もう一人の弟子チェルニーがピアニストとして活躍する一方でリストをはじめとする弟子を育て、現在でも音楽教本に名を残しているのに比べ、リースは弟子をあまりとらず、自分でプロデュースして育てることもあまりしなかったせいもあるのか、あんまり音楽家としての活躍というのが現在まで伝わってないというか。

とはいえ、その一生は平凡とは程遠いものだった
そもそも14歳年上のベートーヴェンが生きた時代が18世紀末から19世紀前半なのだが、この時代はフランス革命とナポレオン戦争、その後のウィーン体制と、ヨーロッパ史では激動の時代。ベートーヴェンはそのころ既にウィーンに居を構えてある程度成功してパトロンもいたから、まったくこの時代の影響を受けてないということはないものの即座にどうこうということはなかったものの、リースはもろに時代に翻弄されまくったというのか。
そもそもリースがウィーンのベートーヴェンに弟子入りすることになったのも、同郷でもともと家ぐるみ音楽関係で付き合いのあったというつながりもさることながらフランス軍の侵攻を受けてのことだし、突如としてベートーヴェンのもとを去らなければならなくなったのもその影響。さらには音楽のできる場を求めて北ヨーロッパに向かった先でもその戦争の影響で私掠船(海賊)に捕まるという体験までしている(無事解放されているが)。そのうえロシアに向かえばナポレオンのロシア遠征にぶつかるとか、一体どんな悪運の強さだ
また摂政時代の産業革命を経て反映するイギリスで世界初の鉄道に乗って移動したり、そうした体験を書簡で生き生きと率直に述べているのだが、人の良さというか親しみやすい人柄が伝わってくる。
もちろん挫折や愛娘を失った悲しみなども綴られていたりするのだが。

一方音楽家としては、ベートーヴェンに仕込まれてヴィルトゥオーゾ・ピアニストとしてデビュー、師匠の曲を披露するだけでなく、自分でもピアノソナタをはじめ室内楽やオペラなど数々の作品を作曲し、ウィーンやドイツ各地から北欧、ロシア、フランス、イギリスなど各地を転々としながら作品を発表し、評価を得ていたのだが、死後それらは忘れられてしまう。本書では既に「クラシック(古典)」の評価を受けていたハイドンやモーツァルト、ベートーヴェン(生前からそう呼ばれていたらしい)と、19世紀のショパンやリストらリースにとっては晩年に台頭してきた若手のロマン派との間に挟まれていたことや、そうしたピアノや作品をめぐる変化のせいもあるのではとしているが。
ちなみに現在はリースの曲もCDでリリースされていて、本書の巻末には年表や参考文献とともに作品リストも収録されているのが親切。

という、激動のヨーロッパを生きた作曲家が生き生きと描かれた好著。おススメです
今日はこのあたりで。

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