真実か妄想か。

読みようによって見方が変わりそうな。


ギデオン・マック牧師の数奇な生涯 (海外文学セレクション)
東京創元社
ジェームズ・ロバートソン

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by ギデオン・マック牧師の数奇な生涯 (海外文学セレクション) の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル



というこちらの本。
この著者の長編はこれが初めての邦訳になるのかな?

で、一応ネタバレなしでさらっとさわりだけ触れると。
この本はタイトルにあるギデオン・マックという、スコットランドのある町で牧師をしていた人物本人がつづった手記という形なのだが、まず冒頭でこの手記がある出版社に持ち込まれたこと、ギデオン・マックが半年前に失踪していること、その直前に牧師として物議をかもす言動をして問題となったことが語られている。そして出版に先立って手記を持ち込んだ人物に、その街に出向いて関係者に話を聞いてくるよう指示、その話が巻末に添えられていて、手記がサンドイッチされているという構成。
そしてその手記のなかで神を信じないまま牧師になったことや父親とのぎくしゃくした関係、突然現れた謎の立石、悪魔と会って親しく話をしたことなどが語られているという。

というから最初歴史ものかとおもったら、舞台は現代だという驚き
イギリスはおおむね神様のことはどうでもいいと思っている人間が多そうだが、スコットランドは長老派だからな。そもそもイギリスとひとくくりにするなと言われそうだし。だからまあ、確かに現代になって教会に通う人が減ったとはいえ、熱心な信徒はいるだろう。ただ、神や悪魔といった問題を持ち出してくるから、もう少しそういうものに真正面から向き合っていた昔の話かと思ったのだが、現代を舞台にしてもちゃんとがっつり信仰や宗教の問題が語られていた。

加えて舞台となるスコットランドのいかにもという伝説が織り交ぜられていたり、イングランドとの確執など近年のスコットランドの歴史的背景がさりげなく織り交ぜられていたり、なかなか読み応えのある内容になっているギデオンを取り巻く周囲の登場人物もなかなか面白いというか、特に教会に反発しているのに牧師のギデオンと交流を持つ不可知論者のキャサリンのキャラクターがいい

そして、ここはちょっとネタバレになるかもしれないので未読の方は飛ばしていただくとして
手記のパートはギデオンが自分の経験したことを書き記すという形なのだが、そこでも悪魔と会ったというギデオンの告白を誰もまともに受け止めようとはしない。加えて、手記の後に添えられた関係者の話を読むと、ギデオンの手記の内容自体どこまでが本当なのかと読み手にも疑いが生じるというか。この話は真実なのか、それともただの妄想なのか、物語はどちらとも言い切れないまま幕を閉じるという。

そんなこんなで、現代のスコットランドの歴史や伝説、信仰を織り込んで綿密に作られた舞台を背景に語られる、どこまでが真実で妄想なのかわからない、ある牧師のなんとも数奇な物語。面白かったです。おススメ

というわけで今日はこのあたりで。

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント

Pumpkinface
2018年02月13日 21:26
面白そうですね~。ところで、神を信じるか、というようなことに関して、印象的だったことがあります。前にも書いたかな? もう15年くらい前の話になってしまいますが、オープンユニバーシティのファウンデーションコースを取っていた時のこと。宗教のモジュールがあって、チュートリアルに出席していた生徒が順に自分の宗教や信条に関して述べたことがあったのです。私は、そういや、漠然と信じていないなぁ、という感じだったのですが、ほかの生徒(全てヨーロッパ人、ほぼ英国人)は、無神論者であっても、考えた末に無神論を選んでいるわけです。そこに何らかの葛藤があるというか、覚悟を決めて神を捨てている。そしてそれはいつも一神教の(ここではキリスト教の)神。私の場合は、まったく葛藤がない。人間が万能とも思っていないけれども、そういうことを考えずに済む環境に生まれ育ってきたので。そしてその環境は日本では特殊なものではない。その違いが非常に面白くて、その旨を発言したのですが、果たして伝わったかどうかは不明。みな、すごく真剣なのも印象的でした。
ニヤリ本舗@管理人
2018年02月15日 20:41
面白いですよ~。舞台がスコットランドなので、またイングランドとはちょっと宗教観も微妙に違っているような気もします。
そして、なるほど、ヨーロッパの人は本人が神を信じていようがいまいが、文化的にはキリスト教のなかで育ってきてますものね。そういえば無神論者で有名なリチャード・ドーキンスも、自分は無神論者ではあるけれど文化的にはキリスト教の影響を受けて育ってきていることはいなめないというようなことを言ってました。そういうあたりは、確かに日本人とは違いますよね。

この記事へのトラックバック