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zoom RSS 義務形といえば義務形というか。

<<   作成日時 : 2012/12/12 14:33   >>

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という本日の読了本


屍者の帝国
河出書房新社
伊藤 計劃

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出たのは今年の夏で、早世したSF作家の伊藤計カク(すみません、ちょっと漢字が出ない)が書き残した未完の小説を、友人の芥川賞作家の円城塔が書き継いだというので話題になっていた本
しかしあいにく私は伊藤氏も円城氏も語れるほどたくさん読んでいないし、話題性とかベストセラーというのもあんまり読書セレクトの基準ではないので、出たのは知っていたがしばらくアンテナにひっかかってこなかったといいますか。おかげでこんな時期に読んでいるという。

じゃあ何が義務形なのかというと、刊行からしばらく経って書評なんかが出るようになったのを見たら、「19世紀末」「ヴィクター・フランケンシュタインの技術により作られた『屍者』が社会の色々なところで利用されている」「英国の諜報員ジョン・ワトソン」と並んでいて、何ですかそれ、私ホイホイ?(笑)。それであらためて本屋に行って、しかしこれハードカバーなので(場所をとるから)どうしようかなあと迷いつつ最初の方だけ読んでみたら、ヴァン・ヘルシングやジャック・セワードが出てくるわ、英国諜報部はユニバーサル貿易を名乗っているわ、ボスはMとだけ名乗っている人物だがどう見てもあの人だわ(ちなみにユニバーサル貿易もMも元ネタは007というか、Mは二重の元ネタだけど)、メスメルとか動物磁気とか霊魂の重さとか、プロローグだけでこんなにてんこ盛りな設定でいいの? ごちそうさま(笑)というので結局買いましたという。

そのつかみのプロローグ部分までを伊藤氏が書いて、残りの部分を円城氏が書いたということで、プロローグはワトソンの一人称なのだが、残りの部分は諜報部(この時代は史実的にまだMI6が存在していないはずなのでウォルシンガム機関と名乗っている。ちなみにこれはエリザベス1世のスパイマスターが元ネタ)が開発した記録用の屍者フライデー(コードネームは007(笑))がワトソンが語るのを記録するというスタイルになっていて、これは多分ワトソン=伊藤氏の物語をフライデー=円城氏が書きとめたという形なのだろう。エピローグ部分は完全に円城氏から伊藤氏へのメッセージともとれるし。

物語自体は医学部を卒業したての若き日のワトソンが、アフガニスタン奥地に存在するとされる「屍者の帝国」を探りに、冒険家のバーナビーと共にアフガニスタンへ向かうところから始まるところがそこから物語は屍者技術そのものや意識の問題、フランケンシュタインが作り出した最初のクリーチャ「ザ・ワン」の謎へとシフトし、それを追ってワトソンはピンカートン探偵社のレット・バトラーやハダリーと共に日本、そしてアメリカへと向かうという流れちなみによく誤解されているけど、「フランケンシュタイン」というのは死体蘇生をやった医学者ヴィクター・フランケンシュタイン博士の名前であって、彼が作り出したものには名前はない。原作ではCreature と呼ばれているだけ。この本では、まあ最初の死者ということでアダムやキリストになぞらえてか、「ザ・ワン」と呼ばれていたりするのだが。ちなみにその屍者の復活は脳に専用のソフトウェア(ネクロウェアと呼ばれている)をインストールするという形になっていて、そのプログラムのために解析機関が使われているという、ちょっとスチームパンクな世界観ですね。

そして結局屍者とは何か、人間の意識とは何かという哲学的な話になっていくのだが、「ザ・ワン」は実は(ネタバレ防止のため伏字)という驚きの正体なのだが、そうすると結局ラスト付近で「ザ・ワン」が語っている意識の正体というのは、この人物のロットワイラーな人が提唱した(ネタバレ防止のために伏字。ヒントは書名かつもはや固有名詞化している用語。ちなみに19世紀のものではない)ということですよね、つまり。この時代にはまだ(ネタバレ防止のため伏字)という用語はないし発見されていないので、代わりに違うものに置き換えられているわけだが。
そのあたりに至る流れとか思想が読みにくいとか難しいという意見をよく目にしたのだが、う〜ん、私は別にそんなことはなかったかな。途中ちょっと中だるみに感じたところはあったが。でも私の読み方は、その屍者や意識の問題もさることながら、登場人物や用語の元ネタ探しを楽しみというのでもあるからなあ(笑)。あんまり一般的な基準にはならないかもしれない(笑)。まあネクロウェアといい、必ずしも19世紀からだけ引っ張ってきているわけじゃないですけど(不気味の谷とかね)。

で、そろそろ年末ということであちこちでミステリー系のベストが出始めていて、結構その中にこの本もランクインしてたのだが、でもどうだろう、ミステリーといえばミステリーかもしれないが、むしろSFじゃないのかなあ。作者はどちらも元々SFの人だし。まあ最近はそういうジャンルの境界線を引くのが難しい作品も多いというか、これもそうなのかもしれないけど。

ちなみに蛇足。
ワトソン君は出てきますが、設定的に若い頃の話なので、後の相方のホームズ君は出てきていません。いや、出てきてないってこともないというか、プロローグとかエピローグとかで触れられてはいるのだけど。さらに言えば、登場人物の一人のハダリー(元ネタがあれなので、この人は当然(ネタバレ防止のため伏字)なのだけど)がラストでえっ、こうなるの? という展開なので、これは続編を書いて是非ホームズ君を出していただきたい(笑)。というかその場合、パスティーシュというかパロディになりそうな気がするが。

そんな感じで、物語はもちろん、19世紀を中心に「えっ、この人がこんな登場の仕方を」などの元ネタ探しを楽しめるので、19世紀が好きな方は是非。キム・ニューマンの『ドラキュラ紀元』とか好きな方は、ノリは全然違うのだけど、面白いかもしれない。

そしてこれは看板に偽りありと言われそうだが、一応ホームズ君関連は面倒なので全部カテゴリ「シャーロック」にぶち込むことにしているので、これも入れておいていいですか?(というか、ホームズ君出てないじゃん(笑))。

というわけで今日はこのあたりで。

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